十二湖と西海岸について
十二湖及び西海岸は、津軽国定公園の一部で、県の津軽国定公園の解説には、袰月海岸から竜飛崎、小泊崎にかけての岩石海岸地形、十三湖から鰺ヶ沢にかけての砂丘海岸、鰺ヶ沢から県境深浦町大間越にかけての海岸段丘・隆起海食台・海食崖を形成し、地層は新第三紀層が大部分と解説、また西海岸は暖流の影響で椿山のヤブツバキ林、岩崎のタブ林などの暖帯性植物が自生し、タゴガエル・サワガ二・ミチノクマイマイ(貝)などの北限動物が生息しているとしています。
同国定公園の同地区は、1704年に起きた羽後・陸奥地震(M7.0)で、崩山が崩れ、谷口がせき止められ、地盤が陥没して十二湖ができたと言われ、33湖沼のうち大崩から見えた池が12だったことから現名称が付けられたと伝えられています。また、1793年の西津軽地震(M6.9~7.1)で、大戸瀬を中心に12㎞の沿岸が最大3.5m隆起し千畳敷等が形成されたと言われています。また、1億6千万年前の大陸から日本の離島、その後の日本海の火山活動、海中隆起から、ブナの祖先とされる“アンチポフブナ”やナウンテンヤマモモなどの植物化石や、コケムシ・二枚貝・ウニ・サンゴ等の化石、クジラ化石等が当海岸岩石や笹内川などで発見されています。
「十二湖」は、1953年に“深浦・十二湖県立自然公園”に指定され、その後1975年に“津軽国定公園”に指定、1990年に“津軽岩木リゾート構想・十二湖メルヘンの国”に指定、隣接の“世界遺産白神山地”は1993年12月に登録、2013年“森林セラピー基地”に認定されています。
十二湖は何と言っても青池が有名だ。今はあまり使われない万年筆やつけペンの青インクを流したような色と言われ、同湖の沸き壷の池も同じような色である。両池とも湧水の影響と言われ、冬でも凍らない。
十二湖内には、“日本キャニオン”という名の場所がある。1953年に当地を訪れた探検家岸衛氏(当時国立公園審議委員)がアメリカのグランドキヤニオンのようだとして名付けたという。以前は、山の上から眺めたが、今は谷から見上げる案内が人気だ。
県立十二湖ビジターセンターは1982年開所、翌年同所隣に「イトウ」飼育所開始。アオーネ白神十二湖(旧サンタランド)隣接地に、白神山地と十二湖解説所として“十二湖エコ・ミュージアムセンター湖郷館”が1999年開所されています。33湖のうち、青池、沸壺の池は湧水から冬季も凍らないが他の湖沼は凍り、王池ではワカサギ釣りがされています。
その他、1969年にロシア・バイカル湖から“オームリ”を破池に放流したが、絶滅したものと思われる。十二湖でも昔はクマゲラを見かけたが、今では見かけた人はいないという。5月末ころから現れるアカショウビンを狙い、最近はカメラマンが殺到している。
隣接地に、笹内川があり、源流部は世界遺産となっている白神岳と向白神岳に挟まれた川で、2002年に向白神岳山頂手前が崩壊し、その土砂が笹内川の堰堤(津軽国定公園地)やその下流まで岩土砂で埋め尽くされ修復工事が行われたが、その後も毎年のように残雪等から堰堤付近は破壊されている。ここには、赤石川、追良瀬川から隧道を通り笹内川で合流した水が、大池水力発電所を稼働している。東日本地震時に県内では岩崎だけ停電にならなかったという。
深浦町の主な樹木・植物
(樹木)
■「世界一の北金ケ沢イチョウ」 場所「北金ケ沢」
幹回り26.25mで日本一、樹高40m、推定樹齢1.300年。国・県天然記念物。全国巨樹・巨木の会の十和田市の高渕氏によると、中国、韓国などの巨木も見たが、今現在では世界一という。
■「関の甕杉」 場所「北金ケ沢」
幹周り7.03m、樹高34m、推定樹齢1000年、県天然記念物。 この地一帯は、安東一族(鎌倉~室町時代)の支配地で、内紛の合戦で討ち死武者の霊を慰めるため植栽されたものと言われる。
■「エノキ」(北限) ニレ科エノキ属、落葉高木 場所「横磯」「椿山」
深浦のみ自生し、特に岩崎・松神から深浦にかけ23本自生。「横磯のエノキ」は幹回り3.25m、樹高8m、推定樹齢200年と言われ、深浦町天然記念物。ほかに椿山、弁天島等にある。4月に薄黄色の花が咲き、9月に赤い実を付け、オオムラサキの幼虫餌木。昔は漆かぶれの薬用とされた。太平洋側では宮城県が北限。青森市内や弘前、八戸に見られるものは北方系のエゾエノキで全く別物。
■「タブノキ」(椨の木)(北限) クスノキ科タブノキ族、常緑高木。場所「岩崎神社」
関東以西中心の木で、海岸近くに多い照葉樹林の代表的樹種で、神社の鎮守の森の樹木としてよく利用の歴史。花期は4~6月に黄緑色の目立たない花を咲かせ、8~9月に黒い実を付ける。枝葉は線香・蚊取り線香の粘結材、樹皮は染料に使われたという。「岩崎・武壅槌神社」境内に36本があり町文化財指定、沢辺駅南線路脇2本、弁天島向の国道崖地12本、岩崎小前渓谷など。 関の民家に植生されているタブノキは樹齢90年で北限。
■「カラスザンショウ」(烏山椒)ミカン科サンショウ属、落葉高木, 場所「松神神社」
カラスがよく食べることからが名の由来。日本、朝鮮南部、中国、フィリピンなどの山野に生え、サンショウ同様特有の香りがあり、アゲハチョウの食草で、花期は7~8月薄緑色、果実は11~1月に赤い実で、黒い種は野鳥による散布種子で発芽。若木はタラノキのような棘があり、壮齢になってもその跡が見られる。松神のカラスザンショウは一時半減したが、現在も生存している。
なお、同神社には日本最古の藍染めとして利用されていた「ヤマアイ」があり、絶滅危惧種。
■「モクゲンジ」(木患子) ムクロジ科、落葉高木 場所「大間越・木蓮寺」、津梅川橋
※中国名の木患子(ムクロジ)からの名とされ、中国原産「センダン」の葉に似るため「センダンバノボダイジュ」とも言われるが、菩提樹とは全く別物。7月頃黄花をつけ、一両日中に中央部が膨らみ赤くなる。英名「Golden rain tree」と呼ばれ、金色の雨が降るようにはらはらと散る。黒い種子は数珠に使われたためよく寺院に植えられ、本州・九州の日本海側に分布。岩崎村の天然記念物。菅江真澄の遊覧記で大間越「木連寺」のものが紹介。弘前市向外瀬の個人所有のものは薬草園跡地のものとされ、幹周り3.1mで県天然記念物、我が国最大級古木。
■「ヤブツバキ」(藪椿)(北限)
深浦・椿山に自生し、エゾイタヤ林、クロマツ、エノキ、オオヤマザクラなどと混生している。通常5~15mになるが、ここのものは強い季節風を受け1~2.5mくらいで、枝が横に広がる。昔は全山椿の紅で燃えていたようだが、天明年間の山火事で焼け、南側だけとなったとのことで、現在椿山への登り階段は通行止めとなっている。
■「ブナ」(橅) 白神山地の代表木で、深浦町での巨木は
・「まほろばのブナ」十二湖内 幹回り5.18m。 ・「山の神」 白神岳登山口 幹回り 5.3m
■「カツラ」(桂)
・井戸股沢のカツラ・・・株立ち 幹回り22.5m 日本一 その後林立木が倒れ歯抜け状態。
・一つ森のカツラ・・・ 一本立ち 幹回り15.9m 株立ち林立木が一部倒木。
(場所別主な植物)
□十二湖
「キンコウカ」「ヤマトキソウ」「「モウセンゴケ」「ナツエビネ」「サルメンエビネ」「コケイラン」「サワラン」「ギンラン」「ユウシュンラン」「イチョウラン」「モイワラン」「ヒメホテイラン」「ショウキラン」「マルバネコノメソウ」「コチャルメソウ」「ザゼンソウ」「スズムシソウ」「ツチアケビ」「シャクジョウソウ」「ラシヨウモンカズラ」「コナスビ」など。
□笹内川
「ウチワダイモンジソウ」「オオヒメワラビ」「「ヤマシャクヤク」「タヌキラン」「ツガルミセバヤ」「クガイソウ」
「オオサクラソウ」「クロバナヒキオコシ」「ミヤママンネングサ」「オシマオトギリ」「ウメバチソウ」「クモノスシ
ダ」「オニシオガマ」など。
□椿山
「アオノイワレンゲ」「ヒメニラ」「「カワラナデシコ」「ヒメヤブラン」「ハマエノコロ」「エゾオオバコ」「イブキボウフウ」「オオバジャノヒゲ」「キツネノカミソリ」「ジャノヒゲ」「エゾオニシバリ」「キバナアマナ」「ヒメニラ」「ハマウツボ」「ノコギリソウ」「タムラソウ」「カワミドリ」「ヒメヤブラン」「ホタルサイコ」など。
□行合崎
5月・・・キジムシロ、ミツバチグリ、アズマギク、フデリンドウ、ヒメハギ、スミレ、センダイハギなど。
6月中旬から7月は、ニッコウキスゲ、ノハナショウブ、スカシユリ、ハマナス、ノアザミ、ハマボッス、ハマヒルガオ、キリンソウ、カキラン、アサツキ、ヒメヤブラン、ムシャリンドウ、ハマエンドウ、ハマベンケテソウ、ヒロハクサフジ、ハマダイコン、ウミミドリなど。
真夏・・・ノコギリソウ、エゾノコギリソウ、カセンソウ、ハマイブキボウフウ、エゾミソハギ、クサレダマ、オカトラノオなど。
9月・・・ツリガネニンジン、カワラナデシコ、アキノキリンソウ、センニンソウ、センダイハギ、ナワシロイチゴ、キバナノカワラマツバ、オドリコソウ、クサフジ、ヒロハクサフジ、ツルフジバカマ、エゾネギ等。
□風合瀬
「ナミキソウ」「エチゴトラノオ」「ハマエンドウ」「ハマハコベ」「ハマフウロ」「ハマゴウ」「ハマボウフウ」「シロヨ
モギ」「カワラヨモギ」「ハマハタザオ」「シャクジョウソウ」「オカヒジキ」「スナビキソウ」「ハマニンニク」「オ
オバナミミナグサ」「ホタルカズラ」など。