「白神山地ブナ林モニタリング調査会」

 (経緯)

 白神山地は、本hp内「白神山地世界遺産登録内容と管理状況」の項に記載の通り、山地は13万haという広大な面積とされ、そのうち世界遺産管理地域は約17千ha(13%)とし、さらにそのうち核心地域10.139ha、緩衝地域6.832haと指定した。

 遺産地域管理方針は、「人手を加えずに自然の推移に委ねることを基本とし、青森地域は指定ルートを利用した登山等を除き立ち入り禁止(秋田県側は入山禁止)とし、緩衝地域は現状の保全を図ることを基本としながら、趣旨に反しない範囲で森林の文化・教育的利用、簡易なレリクリエーションの場、優れた自然とのふれあいの場として利用することができると定めた。 白神山地は、「生態系」がすばらしいとしてユネスコ世界遺産センターから登録された。登録条件として、保護、保全義務が課され、それがなされていないと認められたときは“取り消し”される。

 ◆同会の前身は、環境省の調査として、「自然の推移に委ねる」管理方針に基づき、“見守りながら管理”するための、現状把握と管理地域外縁部の森林利用との調和を目的に、「森林生態系保全のためのモニタリング手法の確立と外縁部の森林利用との調和を図るための森林管理法に関する研究」プロジエクトとして、平成10年に検討会が結成され、翌11年から調査に着手し、適地サイト探しとサイトづくり及び調査(リター調査、木の成長(木の種類、太さの生育、身長の伸び)、実生(稚木)の種類、本数等)が始まり、3年間で終了した。

 

 この調査実施の2年目に、調査人員を一般募集したが人数が集まず、青森県自然保護課より「ウオッチング青森」(自然保護協会青森支部)に協力要請があり、研究者(大学教授)とその生徒(大学生)とともに、一般地域市民(ウオッチング青森会員等)構成となった。    

 前記のとおり  環境省事業はh14年に終了となったが、、h15年より任意団体事業活動として継続し、今日に至る。

 私はh15年にウオッチング青森が開催した「自然保護指導員講習会」に、白神山地の山仲間に誘われ受講し、会員となり、翌16年より同調査隊員として参加している。その後ウオッチング青森は脱会・解散されたが、個人参加を継続し、その後幹事、2020年度で高齢により辞任。

 組織の歩みは下記のとおり。

 

白神山地ブナ林モニタリング調査会の歩み

内              容

1993(h5)12

白神山地が世界遺産登録

1997(h9)

環境省白神山地世界遺産センター西目屋館開館

1998(h10)

環境省東北地方環境事務所(当時、環境省東北地区国立公園野生生物事務所)及び白神山地世界遺産センターによる「白神山地世界遺産地域の森林生態系保全のためのモニタリング手法の確立と外縁部の森林利用との調和を図るための森林管理法に関する研究」のための専門家会議、現地検討会の開催。

1999(h11)

本調査は、地学・気象、植物、動物の3領域の実施として開始。

当ブナ林モニタリング調査は、植物班森林動態グループ調査として、6月に調査サイト(3サイト)を設置するとともに、7~11月リター回収を実施。以降毎年6月リタートラップ設置し7~11月リター回収・調査分績。

2000(h12)

3サイトの毎木調査を7月実施。(以降毎年実施し,データ分析。

日産科学振興財団「日産学術助成金」の交付を受ける。

2001(h13)

3サイトの実生、笹調査を実施(以降毎年実施し、データ解析)

日産科学振興財団「日産学術助成金」2年目の交付を受ける。

2002(h14)

3サイトの低木調査を実施(以降毎年実施し、データ解析)環境省事業終了。※環境省「新・生物多様性国家戦略」策定

2003(h15)

現任意組織として「白神山地におけるブナ林の森林構造及び動態の解明に関する調査研究」をテーマに、毎木、実生、低木、笹の4調査のモニタリング調査を継続実施することとし開始した。(現調査会設立及び事業開始)会長斎藤宗勝、副会長小関孝一、幹事畑雅之、石澤幸人、神林友広事務局石橋史朗、顧問中静透、蒔田明史、松井淳

※前年策定の環境省「新・生物多様性国家戦略」事業として「モニタリングサイト1000」事業開始。

2004(h16)

※前年から実施の「モニタリングサイト1000」の1部門として「森林・草原調査」を開始(現在も継続)

本調査は、毎木、リター、地表徘徊性甲虫、鳥類調査の4項目調査を全国的に実施しているもので、モニタリング手法確立の基となっている。

2007(h19)

㈶花博記念協会助成金の交付受ける。

10周年記念事業「シンポジュウム」(講演、事例報告、パネルデスカッション」開催

基調講演:「白神山地の過去と未来」斎藤会長、パネルデスカッション

松井淳、斎藤宗勝、中静透、小関孝一幹事、蒔田明史、弘大檜垣大助

事例報告:「十二湖ブナ林モニタリング岩崎中学校、自然観察小関孝一 

・記念誌「すずやかな森」発行

2009(h21)

 

 

 

2015(h27)

takaraハーモニストファンド」助成金(h21,22)の交付を受ける。研究助成報告書。「みどりの日」自然環境功労者環境大臣表彰保全活動部門に選定され表彰を受ける。「世界遺産白神山地ブナ林モニタリング調査報告書」(h11~20年度)環境省東北地方環境事務所共著)

総会で会長中静透、顧問斎藤宗勝決定。

2018(h30)

「自然保護助成基金」国際プログラム助成を受ける。

・20周年記念シンポジュウム(秋田藤里町、hゆ とりあ藤里)

 基調講演:中静会長、パネルデスカッション:コーディネーター蒔田副会長、パネリスト神林友広、中山隆志、日下部玄、大野美涼幹事

・冊子「ガイドブック 白神Q&A」発行

2019(r1)

「自然保護助成基金」国際プログラム助成を引き続き受ける。

6回「生物多様性日本アワード」優秀賞(イオン環境財団)受賞

プレゼンテーション蒔田副会長発表(東京)

 2020(r2)

「自然保護助成基金」国際プログラム助成を引き続き受ける。

・コロナで宿泊調査を即日調査に変更。

・幹事板橋朋洋「気候変動下の白神山地ブナ林の群集動態予測と保全についてプロセスモデルによる検討」発表

 

 

  

 ★ 世界遺産白神山地ブナ林モニタリング調査会 http://monitoring.sakura.ne.jp/

 毎年、調査参加者を募集しています。上記調査会ホームページに活動内容、調査結果、毎年の実施日時、申込内容、申込方法、留意事項等が記載されています。参加者にはオリジナル和手ぬぐいを差し上げています。問い合わせは、会のホームページに記載。

 ★発行冊子

 ・10周年記念冊子 「すずやかな森」モニタリングとは、関係者の声など。

 ・20周年記念冊子 「白神山地Q&À」ブナについて、ブナ林についてなど。

ブナについて

・ブナは、欧州では「森の聖母」、ドイツでは「森の土の母」、デンマークでは国の木として愛されています。欧州では針葉樹が多く、葉は樹脂を含み分解が遅いが、広葉樹のブナは針葉樹に比べ、落葉、落枝が分解が速いので土壌を肥沃にする木としての名付けと考えられる。

  しかし、広葉樹の中では、桜やカエデ類に比べ遅い分解の葉だという。桜やカエデ類は糖分、芳香があり、ブナに比べ葉厚も薄く、虫やミミズが食べやすく好まれるという。

 ブナは、セルロースやリグニンが強固で、落ちてすぐの葉は虫が食べにくい。セルロースやリグニンはキノコが分解するので、分解されるまで月日がかかり、適当にやわらかくなってから虫たちが食べるので、その間、毎年大量の落葉が積み重なり、「緑のダム」になるとも言われる水分保持力、ふかふかの森を形成するのです。

・ブナは、水分が多いため、表皮には地衣類(藻とカビ)が繁殖し、白灰色にまだら模様をつくり、滑々する肌触りとともに何か原生林の雰囲気を醸し出す。特に雪国のブナの木肌は白っぽく美しいという。ブナには太平洋側にあるイヌブナとは区分される。

 ブナは、鹿児島県高隅山から北海道黒松内まで分布しているという。北限ブナは、南方産より成長が早いが寿命は短い。南方では、乾燥地が多く個葉が小さく肉厚で、北限ブナは個葉が大きく、樹冠の個葉面積は南方産より4~5倍ほど大きいという。しかし、葉総面積はそんなに変わらないという調査結果で環境に応じた生育がされているという(斎藤秀之氏)。

  しかし、地球温暖化がこのまま進むと、日本の平均温度は、20世末より21世紀末には6.4度が上がり約20度となり、海面は約60センチ上昇し、本州ブナの大半は消失すると環境省研究チーム2014年報告書で発表され、本調査会の調査推移がどのようにあらわれるか。

 

 

モニタリング会の関連写真の主な内容

・活動当初は、モニタリング調査のほかに、選抜メンバーで白神山地を探索楽しんだ。

 写真は向白神岳の静御前写真(吉ケ峰、静御前等)、赤石川源流からヤナタキ沢を登る調査員、赤石川摩須賀岳中腹ノロ沼、大川タカヒグリの上流での遊び、菱喰沢の雪のトンネル、総会後のアフタースキー、集合写真、パネルデスカッション、奥赤石林道倒木で塞ぎ調査できず、リタートラップにはいっていたヒミズ、懇親会など。