登山・山歩き基本事項
★登山にあたって
登山の目的は、健康のため、ストレス解消のため、野花を見たい、野鳥の声を聞きたいなど様々です。しかし街歩きと違って危険もあります。心に余裕がない、心配があれば、それは事故につながる元となります。心に余裕がある楽しい登山とするには、事前の体力強化や山歩きの基本事項のマスター、天候や山行等各種情報の収集、安心服装・道具が必要です。
以下、基本事項について
1. 街と山の違い
低山と高山は気象環境が違います。一般的に、100m高度が増すごとに気温が0.6度ずつ下がると言われます。また、風速1m増すごとに体感温度が1度下がると言われます。
地形にもよりますが、一般に高度が高くなるほど風速が強くなり、樹木の無い山頂などは風をまともに受けます。また、山は植物が多く、尾根と谷の地形でできており、太陽があたる場所の違いによる温度差と植物水分の発散により、霧や雲の発生による雨や雨雲の高山へ覆い雨の比率が高くなります。山登りは、エネルギーの消費で汗もかきます。これらが重なると想像以上に寒さを感じることを理解しましょう。
2. 山歩きの装備
①衣服、雨具、帽子、手袋
上記の温度変化や急な雨、登り時汗かきなどを考え合わせると、機能ウェアと呼ばれる速乾性の下着や衣服がかかせない。重ね着やジッパーやボタン、マフラーや手ぬぐい、手袋等の体温調節、帽子による日除けや枝・落石等頭保護対策等が必要となります。
帽子は、風対策としてあご紐か留め具を取り付けたい。マフラー手ぬぐいは、樹から落下する虫対策としても。手袋は温度調節や木や石・岩をつかんでの上り下りや転んだ時の対応として。軍手は安価だが、寒い場所や濡れる場所は役に立たないこと、濡れても乾きやすいもの、伸び縮みするもの、ケプラー等丈夫な素材のものなどが各種あります。温度調節用予備衣服として、羽毛等の軽く小さくなるものは使い勝手がいい。
ちなみに、テレビ実験で体半分ずつ黒白で分けた衣料を着て、蚊の実験を行った結果、圧倒的に黒に集まった結果が出た。山は黒色を着ない方がいい。また、花の香り等の香水は虫を呼び寄せるという。虫除け用に専用薬があるがサロンパスやハッカも効果がある。
雨具は、汗の水蒸気は通すが雨水は通さないゴアテックスや類似機能品のものが快適です。ポンチョと呼ぶ半袖型のザックごと上半身被るものは夏の暑いときは快適ですが、体に密着していないので風が強い時は中に風が入り飛ばされやすいことや登山道があまり整備されていない場所は、周りの枝等に引っかけやすいことなどの欠点があります。ハイキング向きでしょうか。
雨で体を濡らし風が強いときは、低体温になり危険です。低体温になると死に至ることもあり、体調が悪くなるということは疲れも早く、足の痙攣なども起きやすくなります。
撥水雨具は、雨量が強くなると浸透してくるので、ハイキングや風除け等の利用とし、防水雨具を常時携帯がいいでしょう。雨具を着るときは、雨や霧雨、強風、寒さなどのときである。雨具の色は衣服同様目立たない色のものを選ぶ人がいるが、団体行動時や万が一の遭難を考えると、目立つ色の雨具としたい。高機能タイツは、体力補助力はよくわからないが、水分保持しないので蒸れ感がなく、衣服濡れ時に冷たさ軽減できること、密着性から虫の侵入がないことでも使い勝手がいい。
②靴、靴下、スパッツ
山道は、デコボコ道で、雨水がたまっていたり、土や木の根、石などが濡れて滑りやすくなります。このため、防水で滑りにくい底のシューズを履くと安心感があり、価格の高い靴は蒸れにくいなど快適です。高山等の登山には行動時間が長くなり、荷物が多くなりリュック内の重量が増し、また、道が岩や瓦礫など厳しい条件となりますので、靴底が固い本格的登山靴が安心感があり、低山には軽い防水登山靴がいいとされます。長さは、くるぶしが隠れる深い靴が転んだ時も捻挫しにくいことと、雨水が入りにくいので利用をおすすめします。(なお、長時間歩くと足がむくれること、下山時につま先に指が当たり痛くならないよう多少の余裕があるサイズとしたい)、靴下は、ウールが吸汗発汗、クッション性に優れるが、アクリル等が多い。綿は濡れたままとなり、冷えやマメの原因となるので使わないようにしたい。スパッツと呼ぶ、スラックスの下部分と靴の上を覆うものは、泥除け、雨水・小石侵入除けとして使われる。入山状況に応じて使いたい。
③ザック、ザックカバー、ストックその他
昔は、横型のキスリングというリュックでしたが、現在のザックは、縦長で腰ベルトや肩ベルトが体型に合わせ簡単に締められ、背中パットや型枠で中の荷物で背中が痛くなく、蒸れを防ぎ、横型よりバランスに優れ背負って疲れにくいザックとなっている。また、狭い道の交差時にぶつかりにくいことなどがあります。1ルーム、2ルームのもの、上に雨蓋と呼んだりしている物入れや左右にポケットなどがあるもの、素材も様々です。宿泊や縦走用大型ザックでなく日帰りザックは、多少の左右ポケットや雨蓋のあるものが、地図や飲料、おやつなどすぐ出したいものや急な雨のための雨具入れなどに使い勝手がいい。
日帰りだと30L前後、宿泊・縦走用は50L以上を使っている方が多いようです。
ストックは、二本足より4本足の方が疲れず、安定して歩けることから、最近はストック歩きが多くなりました。整備登山道や木道などを歩くときは、ストックの先にゴムを付け道にやさしい歩き方をしてください。収納して持ち歩く場合は、藪や登山道の狭い道では枝等に引っ掛けやすいので、なるべくザックからはみ出さないよう注意したい。急な雨対策としてのザックカバー利用もおすすめです。別売りしていますが、ザックの底などに収納取り付けているものもあります。
(※ザック内のもので濡らすと困るものは、ビニール袋に収納すること。ごみ袋をザック内に入れて使う方法もあります。大型ごみ袋は、ポンチョ代わりに頭と手の部分に穴を開けて即席ポンチョ(雨具)として被る代用にもできます。
ザック内の収納は、左右のバランスを考えること、中間に重いもの、底と上は軽いもの、背中側に重いものを入れ密着性を高めることが基本です。
4. 水分、補助行動食品
登山道には、トイレが無い山も多くあります。携帯トイレ利用を義務付けているところもあります。登山は汗をかくので、水分補給しないと脱水症状になることがあるので、早めの補給をすること。ジュースやお茶は水分補給にはよいのですが、擦り傷、切り傷等を清水で洗うためにも真水も若干持ちたいものです。水は重いですが、疲れると喉が渇きやすいものです。500mlくらいは余し持ち帰るくらいの量を持ちたいものです。
腹が減っては元気も出ず疲れやすい。最近は、ゼリーやカロリーメイト的補助食品が各種ありますし、従来からの菓子パン、バナナ、餅や飴、チョコレートなど歩きながらでも食べられるものも持参ください。
5. 地図、コンパス、登山届
稜線、鞍部、尾根、谷、キレット
、
■地図と登山道
●登山解説本の古いものは環境が変わっている場合があります。人があまり入らない、整備する人がいない登山道は、藪になり道が無くなっている場合や新しい道ができ、迷う場合があります。最新情報を入手したい。
●最近は主要登山の山は、登山地図が販売されていますが、地方低山は、国土地理院の25.000分の1か50.000分の1地図を利用するしかない。地図には、記号や高度が記載されています。初めは地図の尾根や谷を読み取ることが慣れず難しいが、高度数字を丹念に見ることによって、25.000分の1だと10mごとにシワのような線が描かれているのがわかるようになります。行先をなぞって、曲がり角などまで何メートルあるか、急な斜面か緩斜面化などチェックしておくと、位置図がわかります。さらに、地図に磁北線を引くことで、コンパス(磁石)を見ながら方向確認することができる。最近はGPSが販売され利用者が多くなりましたが、万が一の電池切れや故障というアクシデントもありますので、地図の読図を覚えたいものです。
6.常時携帯すべきもの
①救急セット(医薬品) ②ホイッスル、エマージェンシーシート(アルミシート) ③ヘッドライト ④保険証のコピー ⑤小カッター、ライター ⑥ティッシュペーパー、バンダナ
⑦買い物ポリ袋、割り箸 ⑧筆記具
7. その他必需品
替え下着・靴下、時計、カップ、テーピングテープ、座るときのビニールシート又は折り畳み小型椅子、サングラス、カメラ、ハブラシ洗面具セット、傘、緊急用火付け用具(バーベキュー炭用火付け具、ダケカンバ等の皮等)、車用保安煙筒、替え靴ひも、ファスナー壊れ代用安全ピン
■歩き方
山は斜面の黒土や小石混じり、石だらけ、木の根、岩などの道を歩く。街中は、フラットで滑りにくい路面だから、かかと着地の大股歩きができるが、山道は、バランスを崩しやすい道で斜面を歩く。このため、街中と違ってギアを落としたゆったりしたペースで歩くのがいいとされます。歩幅を狭くゆっくり登ること。これは、歩幅が大きいと体や荷物を持ち上げる足の筋肉負担が大きくなることにつながること。歩幅が小さくとは、足裏全体での着地ということで、バランスを崩しにくい歩き方です。バランスを崩し体制を持ち直おそうとすることは余分な筋肉疲労につながる。足の着地は、バランスを崩しにくい凹凸の少ない場所に着地することで、これもバランスを考えた行動で、大股のかかと着地はバランスを崩しやすいこと、滑ったとき体勢を整えにくいことで、捻挫等の怪我につながりやすい。特に、疲れた下山で転んでの捻挫が圧倒的に多い。登り斜面で、息苦しい時は空気を吸うより、大きく肺の汚れた空気を全部出すように吐くこと、二つ吐いて一つ吸う呼吸法のリズムで登るといいとされます。特に下山時は、背筋を伸ばしあごを引き、腰を曲げすぎないようにして、膝を曲げて降りること。へっぴり腰はバランスを崩しやすく不安定となる。スキーの滑りも腰を落とすのでなく膝を曲げて滑ることがバランスにつながるとされます。
歩くときは下ばかり見ないこと。下ばかり見ていると、はみ出した枝に頭をぶつけたり、上を歩いている人による落石に気づくのが遅れ事故につながることもある。周りを見ていないことは、看板の見落としや道迷い時にも判断材料がなくなる。遠くの景色はもとより、近くの草木などの自然が楽しめない。
クマ避け鈴は、団体行動時や人がいっぱいいる場所では使わないこと。自然に浸ってうるさがる人もいるし、野鳥撮影者には迷惑である。ひょっこり動物に会うこともできない。ただし、誰もいない熊が出そうな場所は積極的に取り付けたい。
■熊に注意したい
本州には北海海よりいない「ヒグマ」はおらず、本州全般にいる胸に三日月マーク(月の輪)の「ニホンツキノワグマ」がいる。東北では、クマが増えているという。最近は、クマと遭遇しケガや時には死亡事故ニュースがよくある。
クマはバッタリ会わなければ襲わないという。また背中を見せ逃げると襲う習性があるという。このため、多い人数でおしゃべりしながら歩いたり、鈴を付けたり、笛を吹いたり、棒で木を叩きながら歩いたりして、こちらにいることを知らせることが大事という。
クマは目が悪く、夢中になって食べているときは気づかないことがあるという。木登りが得意だし、走ると時速50㎞と言われ、馬の首を折るほど腕力があると言われる。バッタリ会った場合は、それでも戦うしかないと言われる。鼻が急所なので、棒や石などで一撃すると逃げるとも言われるので一命のため戦うしか方法が無い。ある程度の距離がある場合は、威嚇しないこと、視線をそらさず後づさりして離れること、木があったら後ろに隠れること、荷物を捨てそちらに興味を持ってもらうことなどが退避方法とされる。
特に、子連れクマは、子供を守ろうと危険だという。このほか、蚊取り線香の臭いも知らせる効果があるとも言われ、火を恐れないこと、学習能力が高いことから人を襲ったクマはまた襲う危険性が増すという。雨降り、川・沢の水音で声や鈴音、消臭などで遭遇危険が増すことも覚えておきましょう。
クマは4月中旬~5月上旬(赤ちゃん親子は少し遅い下旬)の雪解けとともに冬眠から起きだし、木の若芽や花、山菜を食べ、6月には大好きな竹の子、野イチゴのほかフキ、エゾニュー、笹などの植物、時にはアリ・ハチの巣なども食べ、8月下旬には、熟す前のあまり固くなっていないオニグルミ、そして秋にはミズナラの実「ドングリ」や「ブナの実」、栗の実などあまり固くない青いうちから食べるという。ノブドウも大好物だ。ヒグマのようにサケなどは食べない。
動物は子孫を残すために一生懸命に生きる習性がある。クマの交尾は6月頃とされるが、妊娠は晩秋という。この間に栄養が取れるかどうかで妊娠が決まるとも言われ、秋に冬眠も兼ね、ブナの実、ドングリなどで栄養を蓄え、11月中旬~12月に冬眠(クマは体温を数度しか下げず、仮死状態というよりじっと冬ごもりしている)に入り、1月下旬~2月中旬に出産し、赤ちゃんクマは暖かい母乳で凍死せず過ごせるという。
◆スズメバチに注意
スズメバチ被害の大半は、8~10月の3カ月に多く、特に9月が多いとされる。これは、オオスズメバチという最大ハチが他のスズメバチを攻撃し、幼虫やサナギを餌として持ち帰るため、他のスズメバチも警戒態勢をしていることと言われています。 スズメバチは3属16種がいるとされ、多くは「オオスズメバチ」「キイロスズメバチ」「クロスズメバチ」の被害が多い
■巣の10m以内に入ると、エリア侵入者として、偵察ハチが周りを旋回し、「カチカチ」と大顎をかみ合わせた威嚇音を発するので、手で払ったり、バタバタと振動を与えながら逃げたりすると襲ってくる。偵察ハチが警戒フェロモンを噴霧すると集団で襲ってくる。また、巣への刺激、破壊には集団で襲う。何度でも刺すので注意。クロスズメバチは、土の中に多層構造の巣をつくっていることもあり、警戒音を知らずに振動や巣を踏んだりすることに注意。
●対応
・偵察ハチが周りを飛んだら、背を低くし、エリアからゆっくり離れること。左右の動きには強く、上下の動きが弱いとされる。
・手で払ったり、タオルを振り回さないこと。大きな声を出さないこと。バタバタと振動を与える逃げ方をしないこと。
・黒系のものへの反応が強く、白、黄、銀色への反応が弱いとされる。
・ヒラヒラする衣装、純毛、香水、整髪料、ヘアスプレー、化粧品、音や振動に敏感に反応するので注意。
◎刺された時の対応
・毒液は水に溶けやすいので、流水で洗い流し、毒液を絞り出した後、抗ヒスタミン剤を含んだステロイド軟膏を塗り、濡れタオルや冷湿布で冷やす。
・刺された後10~15分に痛み,腫れ,痒み等の炎症や体温上昇が見られ、重傷の場合は、全身蕁麻疹、だるさ、息苦しさ、嘔吐等のアナフィラキシーショック症状の場合は要注意なので直ちに医者に行く。
・一度目に抗体ができ、二度目は抗体反応からショック症状で死に至る場合もあるとされる。ハチアレルギー体質も同様。