■白神山地世界遺産登録内容と管理状況

 ●白神山地の面積、遺産登録区分の内容

    ~~~山地地域と遺産地域は違う・・・・・核心部と緩衝部の違い~~~

 白神山地の面積は13万haとされ、うち世界遺産地域は約1万7千haで13%に過ぎない。つまり、山地町村の居住地以外の山地のほとんどが含まれているものと思われる。世界遺産地域のうち、核心部と名付けられる面積は10,139ha(青森側76%、秋田県側24%)で、ここは後世に現状のままに残したいとしています。緩衝部地域は6,832ha(青森県側73%、秋田県側27%)で、核心部の周りを取り巻く形で、森林施業を行わず自然条件に応じた森林等の教育的利用、自然とのふれあい等を通じてその価値を感じたいとしています。遺産地域は、北緯40度21分~40度33分、東経140度0分~140度13分に位置し、標高約300~1243m(最高峰向白神岳)の山地となっています。なお、遺産地域は全域国有林野です。

 

(ポイント) ~~世界遺産+国定公園+自然公園~~~各種法の網・・・目線は誰のために~~

●山地とは山々が連なっていることで、核心地域はその中心部に位置する奥地で、林道から遠く、これまでもほとんど人が入れない僻地で人為的影響がほとんどなく原生的なまま残されていたこと。マタギ等の一部の者が入ってはいたが、マタギ文化は、たとえば山菜採取にしても間引きながら最低限の採取をすることで毎年の恵みを得るという、山を荒らすという行為をすることなく代々受け継いできたこと。

●緩衝部は、遺産登録以前に一部の原生林は切り出され人工杉等が植林されてしまっていること、地域住民が山菜等で生活利用されていた、既存登山道や暗門等観光利用等がされていた場所もあり、今後も締め出しをせず、核心部と遜色ない場所として、その価値を認めながら利用・学ぶべき場所として位置付けられた。

※「白神山地」13万haについて記載はあるが、どこどこが入っているのか説明している資料を一般には見当たらないが、唯一古い別項の「白神山地周辺図」の範囲と考える。ほとんどは、遺産地域のみ表している地図だけの紹介だけで、核心地域は厳正に対処するとし、緩衝地域と周辺の山地との遜色はあるのか、私はふれあい、教育の場として遜色がないと感じている。これを見ると、十二湖は白神山地に入っていないが、「十二湖」は津軽国定公園の一つで、同公園の範囲は青森県の西海岸から津軽半島の今別町の袰月海岸までを範囲とし、さらに「岩木山」を加え、また「白神岳」は世界遺産地域であり、国定公園ともなっている。十二湖の青池から崩山~大峰岳~白神岳は、白神岳登山の十二湖コースとなっている。つまり一部のようなものである。また、暗門の滝と赤石渓流・くろくまの滝は県立自然公園であり、暗門の滝は緩衝地域でもあるが、赤石渓流・くろくまの滝は遺産地域外の山地となります。つまり、各種の法律が重複させ保護している。一般には生態系保護法や鳥獣保護、保安林などの内容まで熟知していないので、ここでは割愛する。

 

(注 意)  ~~~核心部の入山も「登山」と「研究・取材」の取り扱いに違い~~~

★学術研究、報道機関等の取材等での核心地域“指定ルート”入山には、「入林許可申請」手続きが必要です。

   東北森林管理局への手続き  http://www.rinya.maff.go.jp/tohoku/syo/tugaru

   登山での“指定ルート”入山には「入山届出書」の提出(郵送又は現地各事務所に7日前までに)が必要です。

 上記hp内の・世界遺産白神山地→核心地域への届け出に概要・用紙があります。また、指定27ルートの案内、危険度、ルートの状況なども案内されています。 沢・渓流歩きは登山として扱っています。

★「十二湖」は津軽国定公園、「くろくまの滝」「暗門の滝」は県立自然公園、秋田白神県立自然公園は、自然公園法両県特別保護地域に指定され、工作物の新築、木竹伐採、動植物採捕、落枝の採取、焚き火、鉱物・土石の採取は禁止され、違反者は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金を科することとなっています。

 

 ■核心部の対応が両県に違い、緩衝部も釣りは禁止

                 ~~青森県と秋田県の管理方法がなぜ違う???~~~

 ●青森県側の核心部は、27ルートだけは「入山届」(登山=沢歩き)又は学術研究、報道機関取材は「入林(国有林地)許可申請」を提出した場合は、入ることを認めるとし、核心部のルート外の入山・入林は全面禁止としています。

 秋田県側の核心部は、全面入山・入林禁止としています。  つまり両県により対応が分かれていることに注意。

 ●緩衝部に位置する山地内の各河川は、禁漁(釣り禁止)としている。・・・青森県側は岩木川の大川・川原沢砂防ダム、大割沢・暗門沢の鬼川辺治山ダム、赤石川・赤石ダム、追良瀬川追良瀬ダム、笹内川笹内ダム、秋田県側粕毛川本・支流。違法行為が見つかった場合は、「漁業法」罰則で20万円以下の罰金の対象となります。

(ポイント)

●青森県側ではマタギや住民の山菜採取等、昔から山との生活とのかかわりが根づいていること、また山を荒らさずに守ってきたという文化があること、奥地には簡単に入れるような場所でなく、マタギ等猟生活ができなくなることで登山案内等で生活するひつようがあること。今後も山を守ってきたルールを知っていただくことが教育にもつながること等から全面締め出行為をせずに山地を守ることを次に受け継いでいこうという青森県側の考え方と入れば破壊がされるという秋田県側の考え方により、管理手法に違いが出たということ。なお、核心部については山菜・きのこ等の採取も違反行為となります。

 

  ●遺産後の管理体制

      ~~~縦型から連携?~~~委託管理でどこのもの???

 遺産後の管理体制として、環境省、東北森管理局、青森県、秋田県の連携組織「白神山地世界遺産地域連絡協議会」という連系組織を結成し、各種法の整備が行われた。その後、文化庁(県教育委員会)も加わり、「白神山地世界遺産地域連絡会議」とし、関係市町村がオブザーバーとして参加しています。

 管理の方策として

「白神山地世界遺産地域管理計画」に基づき保全管理を行う。

 1995(h7)年11月に作成した同計画を2013(h25)年10月に改定された。

 「管理計画」の内容は、遺産地域を法律での規制管理、管理事業の実施、利用の適正化情報のための情報発信提供、啓蒙、調査実施による遺産内容の把握と管理への活用等が記載されている。
①山地の崖崩れ等の状況や入山者へのマナー周知及び啓発、違反者の取締りと注意喚起等を各行政組織が委嘱した巡視員によるパトロール制度の実施等の「管理事業」で行う。

②情報発信や相談、研究利用等の支援場所として、「白神山地ビジターセンター」「遺産センター西目屋館・藤里館」、「十二湖エコミュージアムセンター」、「津軽白神森林生態系保全センター」等の設置や藤里森林ムセンターによる森林の仕組みや接し方啓蒙、自然観察や登山等環境教育の推進を行う。

③各省庁、県、市町村等行政がバラバラに行っていた各種調査(山地内の状況把握調査、森林生態系調査、野生動稙物等調査、自然気象等調査、入山者数の状況調査、入山者の内容調査等)を計画的に実施するとともに評価分析による指標の作成等を行い、データ集積に努める。

この管理計画への助言組織として2011(h22)年6月学識経験者からなる「白神世界遺産地域科学委員会」が設置され、また、従来継続的調査「モニタリング調査」が少なかったとし、④等の調査の実施への科学的管理手法のアドバイスを行うこととなった。

「白神山地世界遺産地域管理計画」の改定内容

 今般の改定内容として、

 遺産として後世に残していくために「顕著で普遍的な価値」を明らかにすること、が管理計画の骨子であるとし、

・従来行政機関、研究機関、大学等がそれぞれ調査研究していることを全体的計画に基づき行う。

・従来単発的調査が多いことから各機関調整による全体計画に基づいた継続的モニタリング調査の実施

・調査結果等の情報の共有と従来偏りがあった調査場所の調整改善

・調査結果の科学的な分析、指標づくり

・保全管理方策への反映 

 をあげています。


 ■主な官公庁機関の連絡・問い合わせ先

 ・林野庁東北森林管理局計画課 018-836-2489  同津軽森林管理署 0172-27-2800  同津軽白神森林生態系保全セ   

 ンター 0173-72-2931  米代西部森林管理署 0185-54-5511   藤里森林センター 0185-79-1003

 ・環境省西目屋自然保護官事務所 0172-85-2622   同藤里自然保護官事務所 0185-79-3001

  ・青森県環境生活部自然保護課 017-734-9257    ・秋田県生活環境文化部自然保護課 018-860-1613 


 ■科学委員会委員

 浅沼晟吾(元独立行政法人森林湖総合研究所東北支所支所長)、幸丸政明(前岩手県立大学副学長)、田口洋美(東北芸術工科大学芸術学部歴史遺産学科教授)、田中信行(独立行政法人森林総合研究所植物生態研究領域主任研究員)、中静 透(東北大学大学院生命科学研究科教授)、檜垣大助(弘前大学能楽生命科学部教授)、蒔田明史(秋田県立大学生物資源科学部教授)、由井正敏(岩手県立大学名誉教授)